メディヴァ代表大石佳能子による連載コラム | 医療経済を斬る

「後期高齢者医療制度」について

2008.06.05

 4月の診療報酬改定における一番のトピックスは「後期高齢者医療制度」ではないかと思われます。
 発表と共に名称が「長寿医療制度」に変わり、年金問題に引き続く形で
 保険証が届かないという事務ミスが相次ぎ、その後も抗議が相次ぎ、
 いずれ廃案になるのではないか、とまで思われるほどです。
 
 今回の「後期高齢者医療制度」に関しては、高齢者が重複受診をして
 却って健康を害さないよう主治医を決める、であるとか、支払能力のある高齢者には
 保険料を負担頂くであるとか、考え方としては評価されるべき点も多くあった
 と思うのですが、作り込みが粗雑であった、根回しが不十分であったことが
 決定的な落とし穴だったと思われます。

 一方、本制度の問題として「高齢者から(天引きで)保険料を徴収する問題」、
 「主治医制等の医療制度の問題(受診機会が得られないのでは?)」、
 「診療報酬の問題(安すぎる)」、「事務ミスの問題(保険証が届かない等)」、
 「名前の問題(高齢者に失礼だ!)」が混在して語られていることには、大きな違和感を覚えました。

 根源的な問題は、現状の医療保険制度が財政的に限界が来ていることだと思います。
 75歳以上の高齢者は人口の約1割であるのに、使用する医療費は全体の3分の1。
 しかも全体が3.2%で伸びているのに対し、5.7%の伸びを見せています。
 今後高齢者が増えていき、現行の医療保険財源では「保たない」なかで、
 高齢者にも負担をして頂く、ある程度受診制限をするなどの「荒技」を使わないと、
 限界に来ているということではないでしょうか。

 「後期高齢者医療制度」は問題があるにしても、現行の枠組みを是とするのであれば、
 同じくらい「荒技」的な代替案が必要となります。
 「後期高齢者医療制度」の是非を問うことも必要かもしれないですが、今本当に必要なのは、
 安心して良い医療に掛かり続けるためには、「本当に幾らの財源が必要なのか」、ということを
 本格的に検討することと、それをどう確保するかをゼロベースで考えることではないでしょうか。

 先日、私の前の職場であるマッキンゼー社がシンガポールで開催した、
 アジア6カ国(日本、韓国、中国、シンガポール、インド、オーストラリア)のヘルスケア会議に
 出席させて頂きました。
 そこで同社が発表していた試算によると、高齢化や医療技術の進歩により、
 今後必要となる医療費総額は、2020年には62兆、2035年には92兆と
 政府の予測を上回るとのことです。その金額を現在と同じ財源に頼るとすると、
 収入増を見込んでも2020年には19兆、2035年には43兆円が足らなくなるそうです。
 この差分を税金で埋めるか、民間保険で埋めるかは議論があるところですが、
 「診療報酬の適正化」で達成できるような生半可な金額ではないことを理解しつつ、
 現実的な方策を探る事が必要になってくると思われますが、いかがでしょうか。

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