医療機関経営の日記 | コンサルタントとして日々直面する病院・クリニック経営の課題に迫ります。

第9回 「クリニックの認知獲得のための『勉強会』の活用」

2009.11.17

                                                                                                 コンサルタント 加藤由紀子

 

 患者さんがはじめてのクリニックにかかるのはどういう時でしょうか?
 引っ越してきて間もない地で、いきなり発熱し、とりあえず近所のクリニックに駆け込むケースや、かかりつけのクリニックになんとなく違和感を感じ、知人から別のクリニックを紹介されてかかってみた、などいろいろなケースが考えられます。
 私たちは、クリニックで患者さんの来院経路を調べることがありますが、開院して2~3年以上経過しているプライマリケアを手がけるクリニックであれば、口コミによる来院患者さんが多いのが一般的です。しかし、口コミで患者さんがどんどん来るようになるには、当然、そのクリニックを理解している人が一定数存在していなくてはなりません。
 患者さんがクリニックを理解し、来院にいたるまでの経路を考えると以下のプロセスを踏んでいるものと考えられます。
認知(クリニックの存在を知っている)→理解(クリニックの内容を知っている)→共感(クリニックが自分にあっていると捉える)→来院。
 引越し先で発熱し、あわててクリニックをさがす場合、インターネットやイエローページなどでクリニックの存在を把握し(認知)、標榜科目や診療時間、先生の経歴などを確認し(理解)→自分の病状に対応してもらえそうという目星をつけ(共感)来院するというプロセスをたどります。かかりつけ医をスイッチする場合などはより深いところでの理解と共感が重要になります。知人から薦められてクリニックの存在を知り(認知)→周囲の人に広く評判を尋ねたり、インターネットを閲覧するなどしてそのクリニックの診療方針や雰囲気を把握し(理解)→病気の状況なども考えて、このクリニックは自分にあっているという確信を持ち(共感)、来院する、こんな経路をたどっているものと考えます。
 認知・理解を得て、それを共感につなげていくためには、ただクリニックの扉をひらいて患者さんをまっているだけでなく、積極的な情報発信が重要です。
 情報発信の方法としては、駅や電柱の看板設置や開院チラシのポスティング、クリニックのHP開設などが一般的ですが、今回は認知・理解獲得のための「勉強会」の活用について、お話したいと思います。
 「勉強会」とはクリニックが主催して、地域の人や患者さんに向けて、医療に関する有益な情報を伝え、コミュニケーションを図る催しです。過去に勉強会を行った先生方のテーマをいくつかご紹介すると、「クリニックへのかかり方、同じ内科でも得意分野は異なる」(消化器内科)「花粉症の季節を快適に乗り切る方法」(アレルギー科)「糖尿病の人の食事」(糖尿病外来)「新型インフルエンザ、現在の状況」(内科・小児科)などです。どのテーマからも院長の「こういう患者さんに来てほしい、こういう分野が得意です」という「メッセージ」が伝わってくるようです。
 次に対象者の検討です。対象を既存患者さんにする場合と既存患者さん以外もオープンに参加できる形式にする場合があります。既存患者さんを対象として、診療だけでは伝えきれない話をする勉強会はとても深い意義があるのですが、認知獲得という観点からはオープン形式での実施をお勧めします。
 既存患者さん以外の人に勉強会の告知をすることが、即ちクリニック自体の認知を高める方策になります。クリニックが外にむけてチラシを配る機会は、開院告知以外、ほとんどありません。しかし、勉強会告知のチラシを作成し、近隣にポスティングしたり、近所の商店に置くことで、今までクリニックの存在を知らなかった人がクリニックを「知る」絶好の機会になります。
 以前勉強会を実施したクリニックの院長から「勉強会自体には数名の参加者しかなかったが、その後1年以上、勉強会告知のチラシを手に受診する人が何人もいた」という話を聞いたことがあります。加えて、近隣の商店にチラシをおいてもらったのが縁で商店会や町の商工会議所などと縁ができ、思いがけず地域のバックアップをえることができたという先生もいらっしゃいます。
 開催場所に関しては、自院開催と別に場所を借りるやり方が検討されますが、今回お勧めしたいのは、自院開催です。クリニックは病気の治療や検診受診などの目的を持って足を運ぶところですが、「勉強会」を行うことで、受診目的を持たない人でも気軽にクリニックに足を運ぶことが可能です。「百聞は一見にしかず」一度クリニックに足を運んでもらうことによって「理解」は格段に深まります。患者さん予備軍がクリニックに足を運び、先生の話を聞くことは、強い来院動機となります。
 上述したように良いことずくめの勉強会ですが、煩雑なことも伴います。
 勉強会開催の時間を捻出することがまず大きな課題です。土曜日の午後など診療時間外での開催が一般的ですが、場合によっては一般診療時間の調整が必要なこともありますし、スタッフに休日出勤や残業の要請をしなくては実施できません。また、チラシの作成やポスティングの手配、勉強会での講演スライドつくりなども煩雑な業務になります。さらに当日の出席人数の予想はつきにくく、会場のレイアウトや椅子の手配などをどうすべきか?などにも頭を悩ませます。事前予約制にしたり、先着●名まで、などの表記をして、入れない場合の理解をえるなど、ケースバイケースで柔軟な対応が必要です。
 まずは、スタッフの理解をえて、みなが一丸でことを進める雰囲気を築くことが重要です。これらの煩雑な作業をすすめることでクリニックスタッフの結束が高まったという話も耳にします。スタッフの団結という観点でも勉強会の開催は効果があるのかもしれません。

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