コンサルタント 橋戸 政哉
メディヴァへ転職して一年目のコンサルタント(コンサル)が、初めて携わったプロジェクトを紹介します。
経営再生を目指すあるクライアント病院はこのような問題を抱えていました。
「患者数が減少し続けている。地元での評判も良くないらしい。PR活動が必要か」
このような場合、コンサルとして何をすべきでしょうか。
まず、市場や競合病院などの詳細な「分析」も必要でしょう。パワーポイントにマーケティング用語やグラフを並べ、「有効なPR戦略及び実行計画」という美しい「提案」を行い、プロジェクトが無事終了となるかもしれません。
しかし、これで、病院は再生するでしょうか。
実際には、その病院職員の多くはこのようなことを思っているのです。
「ウチの病院は地元で評判が悪いらしい。恥ずかしくてPRなんて出来ない。逆に止めてほしい」「院内が問題だらけでとても外部にアピールできるような状態じゃない。営業なんて時期早尚」
このように職員の多くが「内向き・後ろ向き」な考えに縛られている場合、いかに詳細な分析も、いかに美しい提案も実質的な効果をもたらさないことが多いのです。
私は職員との対話の中で、「分析・提案」だけではこの病院が再生しないことを早くから感じていました。そこで「クライアントと共に行動することで、クライアントの意識を変えていく」というアプローチを採りました。
まず、「やる気のありそうな若手職員ら」を招集し、自ら会議を仕切り、提案を行います。「病院の地元での評判が悪いという噂がありますが、本当ですか? 地域住民にこの病院のことをどう思っているのか直接聞いてみたい。住民への路上調査をやりたい」すると、案の定、職員は皆、唖然とした表情をします。「怪しい!」「たぶん誰も話してくれないと思う」「最近は忙しいからお手伝いできない」などの否定的な反応ばかりです。
市場調査の経験を持たない人にとって、路上調査には「大きな心理的抵抗」があります。しかし、それを徐々に解きほぐし、説得し、「一緒にやろう」「前の会社でやったことがあるから大丈夫」などと励まし、なんとかして協力を得るのです。これは文章にすると一見、非常に簡単なプロセスのように思えますが、実際には非常に大変でした。
同意を得て後日、職員と共に路上調査を実施しました。知らない方々に路上で声をかけるのは勇気がいる場合もありますが、よい土地柄なため、住民の皆さんは色々と話をしてくださいました。しかしその内容は厳しいものばかりでした。「おたくの病院は潰れるんでしょ?」「存在感が全くない」「医師の態度が生意気」などネガティブな意見が大半を占めました。
私達は「自院のファンであってもおかしくないはずの地域住民」から厳しい批判を目の当たりにし、結果、自院が置かれている現状に明らかな「危機感」を感じました。
しかし、これによって「なぜ患者数が減少しているのか」の答えを「リアル」に理解できたのです。これは、コンサルによる「分析・提案」では得られない大きな効果です。
自院の地元での評判を「リアル」に理解したことで、院内にPR・営業の重要性が次第に浸透していきました。しかし、これだけで「コンサル・プロジェクトが終了」とはなりません。次は、実際に近隣医療機関への営業活動・内覧会などのPR活動を実施する段階へと移るのです。これらの実施の際にもやはり抵抗がありました。一部の職員と私らコンサルの熱意によって行動に移し、共に営業に出向き、共に内覧会を運営しました。これらも非常に高い成果を上げました。
プロジェクトの途中の段階で、ある職員が私達コンサルの取り組みを高く評価してくれました。これはとても嬉しいことでした。プロジェクト終了から数カ月後、実際にその病院の患者数が増加し、収益体質が改善されたという報告を受けたとき、自分たちの取り組みは本当に正しかったのだな、本当に実を結んだのだな、と実感しました。



