今回は、8月末の衆議院選挙をひかえて、自民党と民主党の医療政策の違いを検討してみたいと思います。政策については、それぞれの党が常時改定を繰り返しているのですが、8月12日現在の下記の情報源を参考に、私なりに整理をしてみました。政策の具体的な中身(例えば、ある診療行為はどのような診療報酬になるのか?)が掲載されているわけではないので、評価しづらい点もありますが、掲示されている物を元に想像を踏まえて、検討してみたいと思います。
まずは、今回の政策全体を整理する前に私が特に気になっている点をいくつかまとめさせていただきます。一つ目は、両党とも医療費削減の流れを止め、必要な医療には必要な予算をつけると明記している点です。二つ目は、アプローチは異なるものの両党とも似たような政策が並んでいる点です。三つ目は、民主党の政策にいくつか特筆すべき点があることです。それぞれについて、私が着目している点を整理させていただきます。
まず一つ目の、両党とも医療費削減の流れを止め、必要な医療には必要な予算をつけると明記している点についてです。両党とも救急、産科、小児、へき地医療を重点課題としてあげており、診療報酬の増加とあわせて対応するとしています。また、民主党は年間2200億円の社会保障費削減政策を明確に行わないとしています。ただ、これだけだと急性期や地方の病院に限定した診療報酬向上策に偏るように見えますが、次にも整理しているように、レセプトオンライン化の見直しや外来管理加算の再検討なども掲げており、両党とも開業医への若干の配慮も見られる内容です。
二つ目の、アプローチは異なるものの両党とも似たような政策が並んでいる点についてです。医師不足解消のための医師増員や高齢者医療制度の見直し、レセプトオンライン化の見直し、新型インフルエンザやがん、肝炎対策の強化、医薬品や医療機器の審査迅速化など、似たような政策がならんでいます。これは両方の政策が同時にでてきたものではなく、お互いの政策を見ながら、必要なものはそれぞれが取り入れているため仕方ない面はあるかもしれません。
三つ目の、民主党の政策のうちいくつか特筆すべき点についてです。まずは、民主党はいくつかの過去の政策を明確に否定しました。特に、2200億円の医療削減政策の中止、介護療養病床削減計画の凍結、レセプトオンライン化の義務化から原則化への変更、外来管理加算の時間要件の廃止などは、そのように明記されております。また最も今後の影響力が大きいのは、中央社会保険医療協議会(中医協)のあり方を見直して国会議員主導にするとしていることだと思います。これはあくまで見直しなので判断は難しいのですが、この見直し後の形が医療機関の経営に与えるインパクトは大きいと考えています。場合によっては開業医にはますます厳しく、急性期や大規模病院には手厚い流れができあがってしまうのではないかと考えられます。また、民主党は自民党よりも全体的に数多くの政策をかかげており、実現性はともかくとして、詳細に検討している点については評価ができると思います。例えば、看護師やコメディカルの職能拡大により医師の負担軽減を目指すこと、医師の勤務条件の改善、医療事故対策、周産期や生殖補助医療の体制強化、心身医学提供体制の整備や統合医療の科学的根拠確立などです。
一方で自民党独自でかかげている政策もあり、医療のIT化を進めること、日本版EHRを導入して個人と医療機関が健康情報を自由に扱えるようになることなどが掲げられております。
まとめとして、今回はどちらの党が政権を取るとしても、医療政策の流れが大きく変わる転機であることは間違いないと思っています。自民党が若干保守的でこれまでの政策を修正する、ないしは追加するという立場多が多く、民主党がいくつかの政策を明確に中止・廃止し、また新しい視点での政策を掲げている点は異なりますが、いずれにしても、医療費をこれ以上削減するのではなく、必要な分野を中心に増加に転ずるとしている点が、大きな転換点であると考えています。ただし、全てにあまねく増加というわけにはいきませんので、医療機関としても新たな対策は必要になると考えています。我々も9月以降、政策の流れに注視しながら、経営アドバイスを進めていきたいと思います。
<参考>
自由民主党ホームページ http://www.jimin.jp/index.html
・自民党の政策BANK
http://www.jimin.jp/sen_syu45/seisaku/2009_yakusoku/bank_index.html
・自民党重点政策
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2009/pdf/seisaku-020.pdf
民主党ホームページ http://www.dpj.or.jp/
・民主党マニフェスト
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/index.html
・医療政策詳細版
http://www.dpj.or.jp/policy/koseirodou/pdf/090731medic.pdf



