医療機関経営の日記 | コンサルタントとして日々直面する病院・クリニック経営の課題に迫ります。

第4回 「『トレード・オフ』思考のススメ」  後藤秀之

2009.01.20

「トレード・オフ」思考のススメ

                                                  コンサルタント 後藤秀之

 「トレード・オフ」広辞苑では、「物価安定と完全雇用のように、同時には成立しない二律背反の経済関係」と記されています。要するに「何かを得る為には、必ず何かを手放す」という意味になります。日本の古くからのことわざにも「二兎を追うもの一兎を追えず」ということわざがありますが、こちらの方がなじみやすいでしょうか?

クリニックを開業し経営するという過程の中においても、しばしばこの「トレード・オフ」の判断を求められる機会があるのではないかと思います。
例えば、開業候補地の選定時に、A候補地は「患者数(:[推定患者需要÷競合数]と定義する)は多いが、立地的に不便なところであり環境もあまりよくない」、一方のB候補地は「患者数は少ないが、便利が良く環境の良いところである」、さてどちらを選ぶべきなのでしょうか?また、「限られた投資額の範囲でどの医療機器にお金をかけるべきなのか?」「採用時のスキル重視か?人柄(接遇)重視か?」など様々なシーンが思い浮かびます。

このような場合において、我々は必ず悩みます。また「正」となるような画一的な解が基本的にはないことも知っています。
では、どのように判断することが、ベターなのでしょうか?ありきたりですが、基本に立ち返ることなのだと思います。
つまり、
「自分の成功」という基準(基本)に対しての判断をする(選ぶ)
ことなのだと思います。
そのためには、自分の成功(価値観)について、日々確認しておくこと、振り返ることが必要なのだと思います。

クリニックの開業・経営においては、事業計画書等に記載した「設立趣旨」や「理念」を日々確認し、振返っておくことが、日々の諸問題に対して、正直かつ迅速な判断を行うことに繋がるのではないでしょうか?

例えば、先に挙げた開業候補地の選定では、自分の成功が「多くの患者さんを診療したい」ということであれば、患者数の多いエリアを選ぶことになるでしょう。「自分のライフスタイル重視」であれば患者数が少なくても便利が良く、環境のよい所を選ぶという判断をとることもできるのではないでしょうか?(もちろんこのような判断をする場合には、儲からないが、収益的には最低限赤字にはならないというような前提条件も必要ですが、、、。)

「自分の譲れないところ」が明確であれば、「譲るべきところ」も明確となるのだと思います。

クリニックの患者数と自身の専門性という局面においては、「より自分の専門にあった患者さんを診たいということ」は、「患者さんを紹介すること(患者数が減ることもある)」ということであり、何かを購入するという局面においては、「コストを安く抑える場合」には、「自分がしなければならないことも増える」ということであることを理解し、判断し、行動することが、楽しく、気持ちよくクリニックの開業・運営を行うことにつながるのだと思います。

ただし、「環境が良く患者数も多いというエリアがある」とか「じっくりと判断することで良い方向が見えてくる」とか「安くて良い物がある」という事は、「トレード・オフ」ということではなく、「十分な調査と分析により判断することが必要」ということなので、区別してもらいたいと思います。

この先生は「運がいいな」とか「楽しそうだな」と思えるような先生方は、この「トレード・オフ」を実行している先生のように思います。
「何かをあきらめることが出来る人」は、「何をあきらめてはいけないかということがわかっている人」であり、「自分にとっての成功を最大化することが出来る人」なのだと思います。

筆者も、自身の価値観のなかで「トレード・オフ」を実行したいと思っています。

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